dgwingtong's blog

世の中について書きます

明暗について

明暗では最初読者はいきなりストーリーの中に放り込まれる。

登場人物の背景も知らずその人たちをフラットに眺めることになる。するとどうやっても多くの読者には津田という初めは主人公と思われる意見には賛同できないと思われる。しかしこれは著者夏目漱石がわざと仕組んだ事なのだろうか?それに同調するお延にだって距離感がでるだろう。どうやっても公平に見たらお秀に同調せざるを得ない。

物語の終盤(現存する中断版)で初めてお清の存在が明かされて、津田とお延の特殊な事情が判明するのですが、漱石はそこで二人の釈明がなされるという展開を考えていたのでしょうか。

つまりどう考えても、結婚した独立した二人が親から仕送りをしてもらっているのが異常事態であって、なおかつ津田は約束を破って一切、返済せず、それでなお仕送りが遅れることを怒っている、とんでも野郎だということ。それを正直に知らされていないお延は可愛そうですけど、あれだけ感が良い人ならも少し気がついてもいいはず。それも作者のわざとお秀の仲を拗らせる企みなのかな。