dgwingtong's blog

世の中について書きます

現実療法って凄いな

現実療法とは現実の療法ということではなく、故ウイリアム・グラッサー氏が1965年に「現実療法」という本で表した精神科医的アプローチ方法です。

 

その中で、グラッサー氏は精神病は存在しない、というはてなーが聞いたら卒倒するような過激な発言をしているわけですよ。これはフロイト以来の伝統的な精神療法への挑戦であり、薬は一切用いない等かなりラディカルな内容が含まれているので気の弱いはてなーの皆様におかれまして近づかないほうが身のためです。

 

しかし今の米国の薬用療法一辺倒の流れを見ていますと、このグラッサー氏の「現実療法」は支持を得られなかったのかと思っしまいます。グラッサー氏もただ指を加えて眺めていただけでは無く、その後コントロール理論を経て選択理論心理学と発展させていき、より時代に沿った理論的構築を行っています。

 

ただ、その根本はやはりこの1965年に現した「現実療法」でありその衝撃な内容は知的冒険と言っても過言ではありません。その内容を端的に表している、現実療法と従来療法の違いの六つの点というのを引用してみよう。

 

1.私たちは精神病という概念を認めないから、自分の行動に責任をもてない精神病の人間としての患者は、私たちに関わり合える存在となりえない。

 

2.私たちは現在働いているし、未来に向かっても働いているのだから、患者の経歴には関わり合わない。すなわち私たちは、患者に生起したことを変えることもできないし、またその人の過去によって患者は制限を受けているという事実を容認することもできないからである。

 

3.私たちは患者に私たち自身として関わるのであって、転移像として関わるのではない。

 

4.私たちは無意識な葛藤とか、その葛藤の理由を求めない。患者は無意識な動機づけに基づいて、自分の行動を弁明することによって、私たちと関わり合うことはできない。

 

5.私たちは行動の道徳性を強調する。私たちは関わり合いを凝固させてしまうと考えられる正・不正の問題と対決する。正・不正の区別をしない因習的な精神科医とは対照的に、彼らの求める転移関係を獲得することは有害だと感じている。

 

6.私たちは欲求充足のより好ましい仕方を患者に教える。適切な関わり合いは、患者がもっと満足な行動様式を発見するように助力しなければ得られない。因習的な治療者は、より好ましい行動を教えることが治療の一部であるとは考えていない。

 

どうだろうか、ともすれば、根性論や厳しくしつけないから、と言った逆効果にも繋がるような危険性を波乱でいる。しかしそんな単純な話しでないことはこの本の中にかなり注意深く書かれている。私は英語が読めないのでこの「現実療法」が当時米国でどのように受け取られ、どの程度話題になったのか知らない。

 

今も精神療法の主流にはなっていないからどういう扱いかは分からないのだが現代の精神療法にどういう影響を与えたのかはもっと知りたいところだ。

グラッサー氏は昨年無くなってしまったのだが米国の扱いもそれほど大きく無かったような気もする。晩年行っていたクオリティー・コミュニティはどうなってしまったのか。日本語の情報だと一部関係者からの話ばかりで客観的評価が全く掴めないのはあまり広がりを持って評価されてない裏返しなのかもしれない。

 

もう新刊は手に入らないので図書館で借りて読みました。

http://www.amazon.co.jp/dp/B000JA1KZA

 日本語版が出たのは1975年です。

現実療法―精神医学への新しいアプローチ (1975年)

現実療法―精神医学への新しいアプローチ (1975年)